Baron Lauroの枯淡なる日常

大田区在住・自称貴族の備忘録

不要不急の爆発は控えてください

9月のことだった。私がもうじき家に着くと連絡すると、配偶者は駅まで迎えに行くと言った。長いエスカレータを抜けると改札。小さい出口だからどこに居るのかすぐに分かった。目が合う。手は振らないが、どちらともなく小さく頷いた。

歩きながら夕飯は何にするかについて話した。お米は冷凍したものがあるが、ほかはとくに用意がないとのことだった。近くのスーパー、サミットで何か買って帰ろうかという話になり、その方向を目指した。

サミットに着き、総菜を選ぶ。焼きイカがおいしそうに見えたので、かごに入れた。配偶者はからあげの軟骨を選んだ。とくに野菜はなくてもいいか、という気がしてそのままレジへ向かう。

上階のニトリはもう閉まっているが、サミットは夜遅くまでやっている。そのため、総菜も割引になっている物は少なく、むしろ「午後〇時に作りました」とできたてを売り出している商品も多かった。配偶者が昔に住んでいた地域では、夜遅いと総菜が安いのだが、サミットは思ったよりも安くなってなかった、と言っていた。私も同感だった。

家に着き、手を洗う。冷凍ご飯を温める。次は総菜を温めることにした。

イカも軟骨も同じ皿に盛り、電子レンジに入れる。電子レンジのターンテーブルが回る。もう今日は疲れた。ごはんを食べて、お風呂に入ったらもう寝たい。

そんなことを考えていたときだった。ボンッという爆発音がした。さらにもう一度。ボンッ、と音がする。音は電子レンジからだった。あわてて一時停止する。

電子レンジのドアを開けると、イカが爆発していた。イカは細かい破片となって飛び散り、辺り一帯ににおいを充満させていた。

イカは爆発する。電子レンジに入れてはいけない。そんなことは知らずにこれまで生きてきてしまった。これは有名なことなのか?私も配偶者も知らなかった。

やっぱりここでも私たちは検索してみた。そして、どうやらイカが爆発するのはそれなりに有名なようだ、と結論づけざるをえないほど、検索結果が見つかった。

しかしイカは、爆発したものの、原形を残していた。そこで私たちは、爆発から生き残ったイカを食べることにした。台風でも木から落ちなかったりんごを「落ちないりんご」として受験生に売り出したという話を聞いたことがある。爆発から生き残ったイカも、そんな風に売り出すことができるだろうか。「爆発しないイカ」。爆発しそうな人に需要があるかもしれない。願掛けで爆発しない食べ物が欲しかったんだよね、となるだろうか。ならない気がする。なぜなら、大抵の食べ物は爆発しないからだ。それに、爆発しそうな人の需要が見込めないからである。

イカも軟骨も美味しく食べることができた。しかし、飛び散ったイカの臭気を嗅ぐ度に、私たちは爆発させてしまったという罪悪から逃れられることはできないことを思い知った。メメントイカ。(イカを忘れるなかれ。)

しかしイカよ。爆発する必要は本当にあったか?私たちはお前のせいで臭いに苦しんでいる。掃除はしたが翌日のパンもどこか臭いが残っていた気がする。爆発させたのは悪かった。君だって、電子レンジの中で爆発するくらいなら、檸檬を見習って丸善で爆発したかっただろう。しかし、君は電子レンジで爆発する道を選んだ。それもまた君の中では道理のあることなのだろう。そう思ってはみるものの、電子レンジのにおいがとれないんだ。助けて…。